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ウニベルシダ・デ・チレ留学2026:完全ガイド

海外留学

チリ大学(ウニベルシダ・デ・チレ)はQS世界大学ランキング173位、南米最古の名門大学。PAES入試制度、学費(CLPと円換算)、大学間協定による交換留学やJASSO奨学金など、日本人が進学する現実的なルートを解説。

サンティアゴのアラメダ通りに面したウニベルシダ・デ・チレの新古典主義建築、カサ・セントラル

Lead image: Wikimedia Commons

3月下旬のある火曜日の午後、南半球ではちょうど新学年が始まる季節だ。サンティアゴ中心部、アラメダ通りに面した新古典主義様式の校舎「カサ・セントラル」の前には、新入生の一団が集まっている。彼らの背後にはアンデス山脈がそびえ、真夏でも雪をかぶった峰々が街から見渡せる。エンパナーダを売る屋台があり、学生連合の集会を知らせるビラを配る学生がいて、その脇を、アタカマ砂漠の天文台からちょうど戻ってきたばかりの教授が通り過ぎていく。これは留学パンフレットの中の話ではない。これがウニベルシダ・デ・チレ(チリ大学)、チリで最も長い歴史を持ち、最も影響力のある大学の、ごく普通の一日の風景だ。

要点まとめ: ウニベルシダ・デ・チレは1842年創立の公立研究大学で、チリ最古かつQS世界大学ランキング2026で世界173位に位置する。正規課程への出願はすべてスペイン語で行われ、中央集権的な入学試験PAESを経由する。無償化制度(gratuidad、学費無料化)の対象はチリ国籍者のみで、日本人学生は年間およそ360万〜946万8300CLP(目安で56万円〜147万円程度)の全額学費を支払うことになる。多くの日本人にとって最も現実的な道は学位全体の取得ではなく、大学間協定を通じた学期単位の交換留学だ。同大学は鉱山工学(QS16位)や歯学(同30位)で世界トップクラスの評価を得ている。

このガイドは、これまで紹介してきたヨーロッパの大学ガイドとは趣が異なる。ウニベルシダ・デ・チレは、英語で学べる学部課程を持つオランダやデンマークの大学とはまったく別の世界だからだ。ここではスペイン語、チリ独自の入試制度、そして「公立大学は無料だが自国民に限る」という国のロジックが支配している。本稿では、日本人にとって本当に意味のある情報――大学のランキング上の立ち位置、PAESの仕組み、CLPと円で見た実際のコスト、大学間協定やJASSOの奨学金を使った留学ルート、そして「そもそも行く価値があるのか」という問いに対する率直な答え――を順に解説する。中南米への留学を検討している人、あるいはヨーロッパの大学と比較したい人にとって、全体像がつかめる内容になっているはずだ。

ウニベルシダ・デ・チレ:2026年の主要データ
173
QS世界ランキング2026での順位
同率順位。研究力ランキングARWUではチリ国内1位
1842
創立年
チリ最古の大学
約42,000人
学生数
学部・大学院合計
16位
QS順位:鉱山工学
世界トップクラス、銅の国ならでは
約3%
留学生比率
かなりローカル色の強い大学
サンティアゴ
所在地
チリの首都、アンデス山脈の麓
出典:QS World University Rankings 2026、Times Higher Education 2026、大学公表データ

ウニベルシダ・デ・チレは世界ランキングでどの位置にあるのか?

まず、インパクトのある数字から見てみよう。QS World University Rankings 2026でウニベルシダ・デ・チレは世界173位(同率)につけている。これは日本の多くの大学よりも高い順位であり、中南米の大学の中でもトップクラスの位置づけだ。ここでよくある誤解を正しておきたい。QS単体で見ると、実はチリ国内1位ではない。私立のポンティフィシア・カトリカ大学(116位)の方が上位にある。一方でウニベルシダ・デ・チレが強さを発揮するのは、研究力を測るランキングだ。ARWU(上海ランキング)の2024年版では世界401〜500位のレンジに位置するが、チリ国内では1位に格付けされている。つまり同大学は、あらゆる指標で常にトップというわけではなく、チリを代表する公立の研究大学だということだ。

興味深いのは、大学のプロファイルがかなり偏っている点で、これは実務的に押さえておくべき情報だ。QSは同大学に学術関係者からの評判スコアで91.9点雇用主からの評判スコアで92点を与えており、卒業生の就職実績(employment outcomes)指標は100点満点中97.6点にも達する。つまりウニベルシダ・デ・チレの卒業生は労働市場で非常に高く評価され、ブランド力が強いということだ。一方で論文の被引用数(18.2点)や国際化の指標(複数の項目で13点未満)が総合スコアを押し下げている。国内・地域内での威信は圧倒的に大きいが、国際化はあまり進んでいない大学というのが実像であり、これは外国人にとって具体的な課題につながる(後述する)。

もっとも興味深いのはQS by Subject 2026の分野別ランキングだ。ここでウニベルシダ・デ・チレが本当に世界トップクラスである分野が見えてくる。

  • 鉱山・鉱物工学:世界16位。 これは偶然ではない。チリは世界の銅生産量のおよそ4分の1を占めており、同大学は数十年にわたりこの産業向けのエンジニアを育成してきた。
  • 歯学:世界30位。 Odontología学部は中南米屈指の評価を持つ。
  • 開発学:33位法学:48位。加えて社会科学・経営学(71位)、政治学(72位)でも強く、人類学と地理学は世界トップ100圏内(QSは51〜100のレンジで表示)に入っている。

つまり、あなたの関心がこれらの分野と重なるなら、同大学のブランド力は確かに効いてくる。金融やコンピューターサイエンスで世界的な知名度を求めるなら、LSEボッコーニのような、ヨーロッパやアメリカのより強力な選択肢がある。ウニベルシダ・デ・チレは、万能の「箔付け」としてではなく、分野特化型・地域特化型の選択として意味を持つ大学だ。

ウニベルシダ・デ・チレが世界トップクラスの分野
世界順位、QS World University Rankings by Subject 2026(バーが長いほど順位が高い)
鉱山・鉱物工学16位
歯学(Odontología)30位
開発学33位
法学48位
社会科学・経営学71位
政治学72位
出典:QS World University Rankings by Subject 2026、topuniversities.com

ウニベルシダ・デ・チレの入試はどのように進むのか?

ここから、見落とされがちだが日本人出願者にとって決定的に重要な違いが出てくる。ウニベルシダ・デ・チレはアメリカ式のホリスティック審査もイギリスのUCASのような制度も採用していない。学部課程(pregrado)への入学は、単一の試験を軸としたチリの中央集権的な制度で行われる。それが**PAES(Prueba de Acceso a la Educación Superior)**で、DEMRE(Departamento de Evaluación, Medición y Registro Educacional)が運営している。かつてのPSUに代わる、いわば国の統一入学試験だ。

仕組みは次の通りだ。受験生はPAES(読解力、数学、それに理科や歴史などの科目別試験)を受験する。結果はスコアに換算され、大学側は各学科ごとに**ポンデラシオン(ponderaciones、各試験の配点比率)バカンテ(vacantes、募集人数)**を公表する。1月には中央出願(postulación)が行われ、志望学科を優先順位付きで並べたリストを提出すると、アルゴリズムが得点内で行ける最上位の学科に自動的に割り振る。これはアメリカ式のホリスティック審査よりも、点数で合否ラインが決まる仕組みという点で、日本の大学入学共通テストとその後の出願プロセスに近い感覚がある。ただし、共通テスト後に大学ごとの個別試験(二次試験)を課す日本の一般選抜とは異なり、PAESでは大学側の個別試験はなく、PAESのスコアと出願時の志望順位だけで合否が決まる点が大きく違う。

日本の高校を卒業した出願者にとっては、ここに2つの追加ステップが加わる。まず、チリ教育省で卒業資格の認定(reconocimiento de estudios)を受け、日本の高校卒業資格をチリのシステム上で有効なものとして扱ってもらう必要がある。次に、PAESに登録するのだが、DEMREによれば、チリの身分証明書を持たない外国籍者は、登録ポータルにパスポート情報を登録することで受験手続きができる。ウニベルシダ・デ・チレは、特別出願枠(admisión especial)の一つとして、「Personas con estudios medios en el extranjero」(外国で中等教育を修了した者向け)というルートを明示的に用意している。日程については、2026年サイクル(2027年度入学向け)でPAES Regularの登録期間が2026年6月1日から7月22日まで、本試験は2026年11月30日から12月2日、大学への出願(postulación)は2027年1月4日から7日に実施される(DEMREのカレンダーより)。これとは別に、一部の受験生向けに早期のPAES de Invierno(冬季PAES、2026年6月15日から17日)という試験もあるので、通常の日程と混同しないよう注意したい。日程は毎年変わるため、必ず最新のDEMREカレンダーを確認してほしい。

ただし、避けて通れない壁がある。これらすべてがスペイン語で行われるという点だ。PAESの受験、書類の提出、そして合格後の授業もすべてスペイン語だ。ウニベルシダ・デ・チレは、外国の卒業資格を持つ出願者に語学力の証明を求めている。これは、海外の大学進学ガイドで紹介しているような、英語とTOEFLIELTSのスコアだけで足りる大学とは根本的に異なる。ここではDELEやSIELEといったスペイン語の資格試験が重視され、出願全体の段取りにも出願スケジュールの立て方で紹介しているような入念な計画が必要になる。

日本人にとって現実的な3つのルート

学期単位の交換留学
最も簡単
在籍する日本の大学とウニベルシダ・デ・チレとの大学間交流協定を利用する方法。PAESの受験も学歴認定も不要。一部科目は英語で履修可能で、JASSOなどの奨学金で費用の大半をカバーできる場合もある。求められるスペイン語レベルは通常B1程度。
正規学部課程(学位取得)
最も難しい
チリでの卒業資格認定、PAESへの登録・受験、1月の出願、全額学費の負担。すべてスペイン語で進み、現実的にはB2/C1レベルが必要。スペイン語圏への強いこだわりがある人向け。
大学院(修士・博士)
中間的な難易度
PAESを介さず学部単位での選考。特に研究系プログラムは外国人に対して比較的開かれている。博士課程向けにはANIDの奨学金がある。スペイン語力は引き続き重要。

出典:Universidad de Chile(uchile.cl/admision)、DEMRE、College Council調べ

このセクションの最後に、一つ具体的なアドバイスを。もしあなたが高校を卒業したばかりで、スペイン語がまだ流暢でないなら、いきなり正規の学位取得を目指すのはやめておこう。まずは日本の大学に在籍しながら交換留学に参加し、サンティアゴとチリの学問的な肌感覚が自分に合うかどうかを確かめてから、必要であれば現地での修士や博士を検討するという順序がおすすめだ。この進め方については、海外留学の準備をいつ始めるべきかというガイドでより詳しく解説している。

ウニベルシダ・デ・チレで学ぶ価値がある分野は?

ウニベルシダ・デ・チレは14の学部・研究科と200以上の学部課程プログラムを擁する総合大学だ。特定の分野に特化した小規模校ではなく、ヨーロッパ大陸的な意味での伝統的なフルスペック総合大学である。ここでは、実際に世界水準で強い分野――つまり「どこでもいいから留学する」のではなく、「ここで学ぶ理由」になり得る分野――に絞って紹介する。

Facultad de Ciencias Físicas y Matemáticas(FCFM)は同大学の看板学部である工学部で、チリ国内では通りの名前にちなんで単に「Beauchef(ベアウチェフ)」と呼ばれている。世界16位という鉱山工学のランキングは、まさにこの学部から生まれている。Ingeniería Civil de Minas(鉱山土木工学)、Ingeniería Civil(土木工学)、Geología(地質学)、Geofísica(地球物理学)は、チリ経済を牽引する鉱業界向けの人材を育てている。ベアウチェフはコンピューターサイエンスも強く、世界中の研究機関と連携するCenter for Mathematical Modelingの拠点でもある。天然資源工学や地球科学に関心があるなら、南半球でも屈指の環境がここにある。

Facultad de Odontologíaは歯学の世界ランキング30位を支える学部で、中南米でも最高水準の歯学部の一つだ。

Facultad de Medicinaはチリの医師の多くを育成しており、その歴史は国の歴史そのものと重なる。後に大統領となったミチェル・バチェレも、ここで医学を学んだ一人だ。ただし医学と歯学はもっとも学費が高く(後述)、PAESの合格ラインも最も高い学科でもある。

Facultad de Derecho(法学部)はQSで世界48位につけている。チリの政治・法曹エリートを輩出してきた名門で、卒業生には歴代大統領も名を連ねる。

**Facultad de Ciencias Sociales(FACSO)**は人類学、社会学、心理学に強く、ウニベルシダ・デ・チレは何十年にもわたりこれらの分野で地域の公共的議論をリードしてきた。中南米の政治や社会に関心がある人にとって、ヨーロッパでは得られない視点をこれらの学部は提供してくれる。

地理的な条件に由来する2つのユニークな強みにも触れておきたい。一つは天文学だ。チリの砂漠地帯は世界有数の天体観測の中心地であり、同大学は一流の天文台へのアクセスを持っている。もう一つは地震学・地球科学だ。チリは世界でも有数の地震活動が活発な国であり、Centro Sismológico Nacional(国立地震学センター)はまさにこの大学に付属して運営されている。これらは「間接的に学ぶ」ことが難しい分野であり、自然な研究環境の中でこそ本領を発揮できる。

強みのある学部・分野

FCFM(ベアウチェフ):工学
鉱山土木工学、地質学、地球物理学、コンピューターサイエンス。Center for Mathematical Modelingの拠点。
鉱山工学:QS16位
Facultad de Odontología
中南米屈指の歯学部の一つ。人気が高く学費も高い学科。
歯学:QS30位
Facultad de Derecho
チリの歴代大統領を輩出してきた法学部。公法・憲法分野に強い。
法学:QS48位
FACSO:社会科学
人類学、社会学、心理学。ヨーロッパでは得られない中南米の視点。
社会科学:QS71位
天文学・地球科学
アタカマの天文台や国立地震学センターへのアクセス。現地フィールドでの研究環境。
地理的な強み
Facultad de Medicina
チリの医師の多くを育成。国の歴史と深く結びついた学部。
医学:QS171位

出典:Universidad de Chile、QS World University Rankings by Subject 2026

サンティアゴでの学費と生活費はどれくらいかかるのか?

ここは誤解が生じやすいところなので、単刀直入に説明する。チリはgratuidad(グラトゥイダー、無償化制度)、つまり公立大学の学費無料化で知られている。これは事実だが、大きな注意点がある。gratuidadの対象はチリ国籍者(および一部の永住資格保持者)のうち、所得要件を満たす家庭の学生に限られる。目安として下位60%の所得層が対象だ。国の教育ローンCAEも同様の条件だ。日本人学生はgratuidadにもCAEにも該当せず、全額の学費(arancel)を支払うことになる。

具体的にいくらか。ここでは推測ではなく、大学が2026年度の新入生向けに公表している正式な料金表の数字をそのまま示す(uchile.cl, aranceles estudiantes nuevos)。

  • Medicina(医学):年間946万8300CLP(約147万円)
  • Odontología(歯学):930万7000CLP(約144万円)
  • Ingeniería y Ciencias、共通課程(工学・理学):869万5300CLP(約135万円)
  • Derecho(法学):696万4300CLP(約108万円)
  • 最も学費が安い学科群(主に芸術系)は約360万CLPから(約56万円)

これに加えて、年間のmatrícula(入学手続料)21万7600CLP、日本円でおよそ3万4000円がかかる。円換算は2026年6月時点の目安レートを用いており、1000CLPをおよそ155円として計算している(チリペソの為替は変動が大きいため、CLPの金額を基準に、円換算は目安として捉えてほしい)。

比較するとどうか。工学部の全額学費(年間およそ135万円)は、日本の多くの大学の学費より高いが、アメリカの私立大学やイギリスの留学生向け学費と比べれば明らかに安い。水準としてはボッコーニ大学の学費の上限に近いレンジだ。ただし、チリには英語で学べる正規プログラムがないため、「魅力的な国で英語で学ぶための費用」を払っているのではなく、純粋に「スペイン語で学ぶための費用」を払っている点は忘れないでほしい。

サンティアゴでの生活費は、西欧より低いが日本よりは高めというのが実感だ。現実的な学生の月間予算はおおよそ次の通り。

  • 家賃(シェアハウスまたは学生に人気のエリア:Ñuñoa、Santiago Centro、Providencia):25万〜40万CLP(約3万9000円〜6万2000円)
  • 食費・日用品:20万〜28万CLP(約3万1000円〜4万3000円)、自炊すればさらに抑えられる
  • 交通費(Metro de Santiagoは地域でも屈指の路線網):3万〜4万5000CLP(約4700円〜7000円)
  • 携帯・インターネット・雑費:6万〜9万CLP(約9300円〜1万4000円)

合計すると、月々の実質的な生活費はおよそ70万〜105万CLP、日本円で約10万9000円〜16万3000円程度になる。工学部の学費と合わせると、正規学部課程1年目の総コストはおおよそ250万〜330万円という規模感だ。これはかなりの金額であり、だからこそ多くの日本人にとって現実的なのは、学費が発生しない学期単位の交換留学(協定派遣)だと繰り返し強調しておきたい。

2026年 学科別の年間学費(arancel)
外国人学生の全額学費(gratuidadは日本人には適用されない)。金額はCLP、括弧内は円換算
Medicina(医学)946万8300CLP(約147万円)
最も高額
Odontología(歯学)930万7000CLP(約144万円)
Ingeniería y Ciencias(共通課程)869万5300CLP(約135万円)
Derecho(法学)696万4300CLP(約108万円)
芸術系学科(〜から)約360万CLP(約56万円)
別途、年間matrícula(入学手続料)21万7600CLP(約3万4000円)が必要。2026年6月時点の目安レート:1000CLP≒155円。
出典:uchile.cl、aranceles estudiantes nuevos 2026;CLP/JPY為替はWise、2026年6月時点

日本人が利用できる奨学金・資金調達の方法は?

gratuidadの対象外である以上、資金はどこから調達すればよいのか。ここはヨーロッパの大学とは事情がかなり異なる。EU圏内であればEU学生向けの現地奨学金制度が存在する大学もあるが、チリでは日本人はそもそも国内支援制度の枠外にあるため、資金は外部から、あるいは交換留学プログラムのレベルで確保する必要がある。

最も重要で現実的な手段は、**大学間交流協定に基づく交換留学(協定派遣)だ。多くの日本の大学は世界各地の大学と協定を結んでおり、もしあなたの大学がウニベルシダ・デ・チレと協定を締結していれば、半年から1年、奨学金付きでサンティアゴに留学できる可能性がある。この枠組みでの留学を財政的に後押ししてくれるのが、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)**の海外留学支援制度(協定派遣)で、渡航費や生活費の一部を補助してくれる場合が多い。実際にサンティアゴで学ぶための、間違いなく最も費用対効果の高い方法がこれだ。制度全体の仕組みについては海外留学の始め方ガイドで詳しく解説している。

もう一つの選択肢が、文部科学省が官民協働で運営する**「トビタテ!留学JAPAN」**だ。この制度は特定の国・地域に限定せず、世界各地への留学を対象にしており、中南米への留学がテーマに合致すれば対象になり得る。募集内容や採択テーマは年度ごとに変わるため、応募を検討するなら必ず最新の公募要項を確認してほしい。米国留学に特化したフルブライト奨学金(日米教育委員会)とは異なり、こうした制度は行き先の国を問わず利用できる点が強みだ。

博士課程レベルでは、チリの**ANID(Agencia Nacional de Investigación y Desarrollo)**という研究振興機関が奨学金を提供しており、これは研究系プログラムに合格した外国人学生も対象になる。これは、まず自分自身の研究テーマとスペイン語力をしっかり固めた人向けのルートで、数千件規模の関連研究プロジェクトを抱えるウニベルシダ・デ・チレは、その受け皿として適した環境だ。

長年この分野でアドバイスをしてきて思うのは、この意思決定の経済合理性がオランダやデンマークの大学とはまったく違う構造をしているということだ。あちらでは、日本人学生でも英語でほぼ無料に近い形で正規課程を修了できる場合がある。チリでは、日本人学生はスペイン語で全額の学費を払うことになる。だからこそ、学位全体の取得が意味を持つのは、意識的に中南米というキャリアの方向性を選ぶ場合であって、単に「割安な箔付け」を探している場合ではない。それ以外のほぼすべての人にとって、学期単位の交換留学は同じ体験のより優れたバージョンだ。

  • Jakub Andre、College Council創設者

一つ、私たちの実務経験から得た気づきを共有したい。中南米への留学を検討しているお客様との対話の中で、最も日本人の予想を裏切る点は2つある。一つはgratuidadの対象外であるという事実、もう一つはチリの入試・出願プロセスがいかにスペイン語中心かつローカルであるかという点だ。だからこそ私たちは、いきなり学位全体の取得を決断する前に、まずは日本の大学に在籍しながらの交換留学から始めることを、ほぼ例外なく勧めている。こうしたサポートの内容については教育コンサルティングとは何かという記事で、私たちについてはCollege Councilとはというページで紹介している。

サンティアゴでの学生生活はどのようなものか?

サンティアゴは人口600万人を超える大都市で、アンデス山脈の麓の盆地に広がっている。この街は対比の街だ。「Sanhattan(サンハッタン)」と呼ばれるラス・コンデス地区の近代的な高層ビル群は、植民地時代の面影を残す旧市街や、ストリートアートで彩られたベジャビスタ地区の芸術的な路地と隣り合っている。学生にとっては、優れた公共交通機関、地域でも屈指の地下鉄網、そして週末に足を延ばせる山々を備えた、エネルギッシュな大都市での生活を意味する。

ウニベルシダ・デ・チレは、アメリカの大学によくある一つの閉じたキャンパスを持っていない。各学部は街全体に散らばっている。アラメダ通り沿いの歴史的建造物カサ・セントラル、少し離れた場所にある工学部キャンパスのベアウチェフ、Ñuñoa地区にある社会科学・人文学系のフアン・ゴメス・ミジャス、そして臨床病院に隣接する医学部。これはキャンパスライフのリズムを変える。「キャンパスに住む」のではなく、街の中に住み、地下鉄で通学するという生活だ。学生の多くは、自分の学部から近いÑuñoa、Providencia、あるいはSantiago Centroといったエリアに部屋を借りる。

ここでの学生生活には、西欧では見られない強い特徴がある。政治的・社会的なエネルギーの強さだ。Federación de Estudiantes de la Universidad de Chile(FECh、学生連合)は、中南米でも最も歴史が古く影響力のある学生団体の一つで、チリの学生には抗議運動や公共討論の長い伝統がある。今日のチリ政界を率いる人物の多くが、この大学の学生運動出身だ。政治や社会運動、中南米そのものに関心があるなら、ここは多くのことが実際に動いている環境だ。

大学の外に目を向ければ、チリは他ではなかなか得られない体験を提供してくれる。ある週末はアンデス山脈でスキーを楽しみ(サンティアゴ近郊のスキー場は6月から9月にかけて営業している)、次の週末には色彩豊かな港町バルパライソで太平洋を眺める、ということも可能だ。北にはアタカマ砂漠、南にはパタゴニア、チロエ島――これらすべてが少し長めの旅の範囲内にある。交換留学に来る多くの学生にとって、最も印象に残るのは大学そのものよりも、こうした地理的な豊かさであることが少なくない。

ただし、2つのことは覚悟しておいてほしい。まず、言語の壁は本物だ。チリ独特のスペイン語は、スペイン語圏全体の中でも特に聞き取りが難しいアクセントの一つとされており、独特の口語表現(chilenismos)と早口な話し方が特徴だ。次に、行政手続き。学歴認定、学生ビザ、各種登録――これらすべてに忍耐力とスペイン語力が要求される。住居など実務的な内容については、海外での寮・住居探しガイドでより詳しく解説している。もしスペイン語学習のためにギャップイヤーを検討しているなら、それは多くの人にとって十分に理にかなった選択だ。

ウニベルシダ・デ・チレ卒業後のキャリアはどうなるのか?

ここはデータがはっきりと物語っている。QS World University Rankings 2026で、ウニベルシダ・デ・チレは雇用実績(employment outcomes)指標で100点満点中97.6点雇用主からの評判スコアで92点を獲得している。チリおよび地域全体の文脈では、この学位は労働市場で得られる最も強力なシグナルの一つだ。卒業生は行政機関、司法、大企業、学術界の最上位ポストに進んでいる。

ただし、2つの市場を分けて考える必要がある。チリおよび中南米圏内では、ウニベルシダ・デ・チレのブランドは第一級だ。ベアウチェフ出身の鉱山業界エンジニア、法学部出身の弁護士、医学部出身の医師――これらはいずれも、国内・地域内で名声あるキャリアへの道だ。銅の採掘業は世界的な重要性を持つ産業であり、金属を産出するあらゆる場所でチリの専門知識は高く評価されている。

中南米以外では、状況はより複雑だ。ブランドの認知度は、ヨーロッパやアメリカのトップ大学に比べると低く、そもそもスペイン語で学ぶという事実そのものが、あなたの自然な労働市場をスペイン語圏に方向づけることを意味する。これは欠点というより、意識的に選び取るべき方向性だ。スペイン語圏での環境でのキャリア、中南米地域で活動する組織、鉱業、エネルギー、あるいは中南米研究を目指すなら、この学位はヨーロッパの大学では開かない扉を開いてくれる。

大学の歴史は、その重みをよく物語っている。ウニベルシダ・デ・チレには、数十人のチリ大統領が関係している。サルバドール・アジェンデは、1970年に大統領となる前にここで医学を学んだ。チリ初の女性大統領となったミチェル・バチェレは、同大学の医学部出身だ。2000年から2006年に大統領を務めたリカルド・ラゴスは、ここで法学を修めた。同大学に縁のあるノーベル文学賞受賞者も2人いる。ガブリエラ・ミストラル(1945年受賞)とパブロ・ネルーダ(1971年受賞)だ。これは宣伝文句ではなく、この大学がほぼ2世紀にわたって国全体のエリートを形成してきたという事実だ。

QS 2026プロファイル:強みと弱み
各指標のスコア(0〜100)、QS World University Rankings 2026
卒業生の就職実績97.6
雇用主からの評判92.0
学術関係者からの評判91.9
国際研究ネットワーク77.9
教員一人あたりの被引用数18.2
留学生の多様性13.1
出典:QS World University Rankings 2026、topuniversities.com

ウニベルシダ・デ・チレと代替の選択肢:本当に価値があるのか?

これだけの数字を並べたところで、日本人にとって現実的な2つのカテゴリーの代替案とウニベルシダ・デ・チレを比較してみよう。これは抽象論ではなく、実際の分岐点だ。

1つ目の代替案は、ヨーロッパ大陸の英語で学べる大学だ。目的が「英語で学べる、世界的に通用する学位を、安く、日本からアクセスしやすい形で取得すること」であれば、オランダや北欧の大学は、実質的にほぼすべての面でチリに勝る。学費の水準は多くの場合より低く、スペイン語という壁もなく、国際化も進んでおり、ヨーロッパ内での移動もしやすい。良い参照点となるのが、たとえばマーストリヒト大学だ。だからこそ、もし「チリかヨーロッパか」を単純にブランド力や費用だけで迷っているなら、多くの場合ヨーロッパに軍配が上がる。この点は海外留学のROI分析アメリカ・イギリス・ヨーロッパの費用比較、そしてヨーロッパとアメリカのMBA比較でも詳しく示している。

2つ目の代替案は、中南米・チリ国内の他の大学だ。チリ国内での最大のライバルは私立のポンティフィシア・カトリカ大学で、ランキングではさらに上位につけることも多いが、学費は高い。地域全体では、ブラジルの大学(USP、Unicamp)やメキシコの大学(UNAM、Tec de Monterrey)も競合する。ウニベルシダ・デ・チレの強みは、公立大学であること、国内で最も長い伝統を持つこと、そして工学と社会科学が強いことの組み合わせにある。

では、ウニベルシダ・デ・チレはどんなときに良い選択なのか。私見では、3つの状況が考えられる。

第一に、意識的に自分の将来を中南米とスペイン語に結びつける場合。地域最高峰の公立大学の学位は、そのとき本物の武器になる。

第二に、鉱山工学、地球科学、天文学、中南米人類学といった、この大学ならではの強みに具体的に関心がある場合。この水準・この環境をヨーロッパで得ることはできない。

第三に、そして最も対象者が多いのがこのケースだが、学期単位の交換留学でこの地域を体験したい場合、全額学費を払わずに行ける道だ。日本人学生の圧倒的多数にとって、実はこの第三のルートこそが最適解だ。まだ戦略が固まっていないなら、海外の大学を選ぶ完全ガイドから読み始めてほしい。

スペイン語ができなくてもウニベルシダ・デ・チレに留学できますか?
正規の学部課程では不可能です。授業・試験・教材はすべてスペイン語で行われ、入学試験PAES自体もスペイン語で受験します。外国の卒業資格を持つ出願者には語学力の証明が求められます。スペイン語ができない場合に現実的なのは、一部科目を英語で履修できる交換留学と、大学院・博士課程の一部プログラムに限られます。正規課程の学位取得を目指すなら、最低でも1年間はスペイン語をB2レベルまで集中的に学ぶ計画を立ててください。
外国籍の学生がウニベルシダ・デ・チレに出願する場合、入試はどのように進みますか?
正規入試はDEMREが運営するPAESを通じて行われます。日本の高校を卒業した出願者は、まずチリで卒業資格の認定を受けたうえでPAESに登録し、試験を受験し、大学に出願する必要があります。大学側も外国で中等教育を修了した人向けの特別出願枠「Personas con estudios medios en el extranjero」を用意しています。2026年サイクル(2027年度入学向け)ではPAES Regularの登録期間は2026年6月1日から7月22日まで、本試験は2026年11月30日から12月2日、大学への出願は2027年1月4日から7日に行われます。別途、早期の「PAES de Invierno」(冬季PAES)が2026年6月15日から17日に実施されます。日程は毎年変わるため、必ずDEMREの最新カレンダーを確認してください。
日本人がウニベルシダ・デ・チレで学ぶ場合、学費はいくらかかりますか?
日本人学生は全額の学費を負担します。無償化制度(gratuidad)や国の教育ローン(CAE)はチリ国籍で所得要件を満たす学生のみが対象だからです。2026年の年間学費は、芸術系学部の約360万CLPから医学部の946万8300CLPまで幅があり、日本円ではおおよそ56万円〜147万円程度(2026年6月時点の目安レート、1000CLP≒155円で換算)です。これに加えて年間の入学手続料21万7600CLP(約3万4000円)と、サンティアゴでの生活費が月10万9000円〜16万3000円ほどかかります。
日本人はどのようにしてウニベルシダ・デ・チレへの交換留学に参加できますか?
最も現実的なのは、在籍する日本の大学がウニベルシダ・デ・チレと大学間交流協定を結んでいる場合の協定派遣による交換留学です。ウニベルシダ・デ・チレは国際交流を担当する部署を備えており、半年から1年の交換留学生を受け入れています。交換留学であれば通常PAESの受験も学歴認定も不要で、JASSOの海外留学支援制度(協定派遣)などの奨学金で費用の多くをカバーできる場合があります。中南米への留学も対象になり得る「トビタテ!留学JAPAN」も候補の一つです。
ウニベルシダ・デ・チレの学位は国際的に通用しますか?
はい。ウニベルシダ・デ・チレはチリの国家認証機関Comisión Nacional de Acreditaciónから最高水準の認証を受けた公立の研究大学です。日本にはヨーロッパのような一括した学位認証制度はありませんが、大学院進学や就職の際には大学・企業がそれぞれ個別に学位を評価します。QS世界大学ランキング2026では世界173位につけており、日本の多くの大学より上位で、学術コミュニティでの知名度は十分にあります。
ウニベルシダ・デ・チレが特に強い分野は何ですか?
QS World University Rankings by Subject 2026によると、鉱山・鉱物工学が世界16位、歯学が30位と特に高い評価を得ています。開発学(33位)、法学(48位)、人類学、地理学、社会科学も強みです。これは銅鉱業を基幹産業とするチリという国の産業構造と、1842年の創立以来チリのエリートを輩出してきた大学の性格をよく表しています。
必要なスペイン語のレベルはどれくらいで、どう証明すればよいですか?
正規課程であれば現実的な最低ラインはB2、余裕を持って学ぶならC1です。講義や試験はチリ特有の速いスペイン語で進むためです。最もよく認められる資格はセルバンテス文化センターが実施するDELEのB2/C1、またはSIELEです。交換留学であれば要件が緩やかになることが多く(B1程度)、特に一部科目を英語で履修する場合はなおさらです。出願の最低でも1年前からスペイン語学習を始めることをおすすめします。

まとめ:ウニベルシダ・デ・チレはどんな人に向いているか

ウニベルシダ・デ・チレはチリ最古かつ最も影響力のある大学であり、鉱山工学と歯学で世界トップクラス、大統領やノーベル賞受賞者を輩出してきた名門だ。チリ人にとっては憧れの頂点であり、gratuidadのおかげで多くの場合実質無償だ。日本人にとっては、まったく異なる計算が必要になる。全額学費、スペイン語という壁、そしてローカル色が強く国際化があまり進んでいない大学の性格。

だからといって価値がないわけではない。意識的に選ぶ必要があるということだ。中南米とスペイン語に自分の将来を重ねているなら、あるいはこの大学固有の強みに強く惹かれているなら、学位全体の取得は優れた決断になり得る。QSランキング173位、就職実績スコア97.6点というのは、揺るぎない根拠だ。それ以外のほぼすべての人にとって、この経験の最良の形は、大学間協定やJASSOの制度を活用した学期単位の交換留学だ。サンティアゴ、アンデス、太平洋を体験し、同級生の誰も持っていない経歴を積み上げながら、学費は一切払わずに済む。

次のステップ

  1. ルートを決める:学位全体か交換留学か。多くの日本人にとって答えは交換留学だ。自分の大学がウニベルシダ・デ・チレと協定を結んでいるか確認しよう。
  2. スペイン語学習を始める:交換留学なら最低B1、正規課程ならB2/C1が目安。1年間の学習計画とDELEまたはSIELEの受験を組み込もう。
  3. 予算を計算する:全額学費(360万〜950万CLP)に加えて生活費(月10万9000円〜16万3000円)。JASSOやトビタテ!留学JAPANの募集時期も確認しておこう。
  4. 合格可能性を確認し、計画を立てるapp.college-council.comで、チリとヨーロッパの選択肢を比較し、出願スケジュールを一緒に組み立てられる。
  5. 書類の準備を進める:正規課程を目指すならチリでの卒業資格認定とPAESへの登録、交換留学ならラーニングアグリーメントと学生ビザの準備が必要だ。

大学・海外留学に関する他のガイドもぜひチェックしてほしい。LSEボッコーニシアンスポKUルーヴェンアムステルダム大学、そして海外の入試制度との比較については日本の入試制度と海外大学の換算ガイドも参考にしてほしい。サンティアゴで会えるか、あるいはどこか別の場所で会えるか、いずれにせよ健闘を祈っている。

出典と方法論

  1. QS Quacquarelli Symonds - QS World University Rankings 2026: Universidad de Chile(173位、各指標のスコア)
  2. QS Quacquarelli Symonds - QS World University Rankings by Subject 2026(鉱山工学16位、歯学30位、法学48位)
  3. Universidad de Chile - Admisión y Matrículas(出願ルート、admisión especial)
  4. Universidad de Chile - Aranceles estudiantes nuevos 2026(arancelおよびmatrícula)
  5. DEMRE - Proceso de Admisión, PAES(試験・登録の仕組み)
  6. DEMRE - Calendario del Proceso de Admisión 2026(登録期間2026年6月1日〜7月22日、PAES Regular 2026年11月30日〜12月2日、PAES de Invierno 2026年6月15日〜17日、出願2027年1月4日〜7日)
  7. Times Higher Education - World University Rankings: University of Chile(学生数約42,000人、大学構成)
  8. ShanghaiRanking(ARWU)2024 - 世界401〜500位、チリ国内1位
  9. Wikipedia - University of Chile および List of alumni(1842年の創立からの歴史、卒業生)
  10. Wise - CLP/PLN為替レート(為替換算の参照元、2026年6月時点。CLP/JPY換算は同レートおよび当時のPLN/JPY相場をもとにCollege Councilが算出した目安値)
  11. College Council - 中南米への留学を検討する顧客との対話から得た独自データ(2024年〜2026年)

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